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IPランドスケープとは?特許調査・パテントマップとの違いや、知財戦略との繋がりについて解説

IPランドスケープとは?特許調査・パテントマップとの違いや、知財戦略との繋がりについて解説
INDEX
  • IPランドスケープとは

  • IPランドスケープが注目されるようになった背景

  • IPランドスケープでは何を分析し、どう活用するのか

  • IPランドスケープで変わる知財人材の役割

  • まとめ|IPランドスケープは知財と経営をつなぐ取り組み

「IPランドスケープ」という言葉を、最近よく目にするようになった方も多いのではないでしょうか。

 

IPランドスケープとは、特許をはじめとする知財情報を分析し、経営や事業の意思決定に活かす取り組みです。近年、知財分野で注目が高まっており、企業の知財部門はもちろん、特許事務所で働く方や、これから知財の仕事を目指す方にとっても、押さえておきたい考え方のひとつです。

 

この記事では、IPランドスケープとは何か、なぜ注目されているのかについて解説します。

 

IPランドスケープとは

IPランドスケープ(IP Landscape)とは、経営戦略や事業戦略を考える際に、特許などの知財情報と、市場・競合・自社事業などの経営情報を組み合わせて分析し、その結果を経営や事業の意思決定に活かす取り組みです。

 

特許庁は、IPランドスケープを「経営戦略又は事業戦略の立案に際し、経営・事業情報に知財情報を組込んだ分析を実施し、その分析結果(現状の俯瞰・将来展望等)を経営者・事業責任者と共有すること」と説明しています。

 

ポイントは、次の2つです。

 

・特許情報だけを見るのではなく、市場や競合、自社の事業などの情報と組み合わせて分析すること

・分析して終わるのではなく、その結果を経営者や事業責任者と共有し、意思決定に活かすこと

 

「ランドスケープ」は、英語で「景観」や「全体像」といった意味を持つ言葉です。技術や市場、競争環境などを、地図を見渡すように俯瞰して捉えるイメージと考えると分かりやすいでしょう。

 

参照:特許庁「経営戦略に資するIPランドスケープ実践ガイドブック」

特許庁 令和2年度産業財産権制度問題調査研究「経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究について」

 

従来の特許調査やパテントマップとの違い

知財の実務では、以前から「特許調査」や「パテントマップ」が活用されてきました。では、これらとIPランドスケープは何が違うのでしょうか。

 

■従来の特許調査やパテントマップ

従来の特許調査やパテントマップでは、特許情報を調べたり、整理・可視化したりすることが中心です。たとえば、ある技術分野でどれだけ特許が出願されているか、どの企業がどのような特許を保有しているか、といったことを把握します。

 

■IPランドスケープ

IPランドスケープでは、特許情報だけでなく、市場動向や競合企業、自社の事業状況なども組み合わせて分析します。そのうえで、「自社はどの領域に注力すべきか」「どの技術に投資すべきか」といった経営や事業上の判断につなげていきます。

 

つまり、特許情報を把握すること自体を目的とするのではなく、その情報を経営や事業の意思決定に活かすところまでを視野に入れている点が、IPランドスケープの大きな特徴です。

 

参照:特許庁 植田高盛(特許戦略企画調整官)「バックキャスト思考による企業の知財戦略のあり方と課題」

 

IPランドスケープが注目されるようになった背景

IPランドスケープが日本で注目されるようになったのは、2017年頃からです。その後、コーポレートガバナンス・コードの改訂や、知財・無形資産を経営に活かす動きが広がる中で、重要性がさらに高まってきました。

 

2017年頃から知財分野で注目が高まる

2017年に特許庁が公表した「知財人材スキル標準(version 2.0)」では、IPランドスケープが知財人材に求められるスキルのひとつとして位置づけられました。特許庁も、2017年頃からIPランドスケープが注目を集めるようになったと説明しています。

 

IPランドスケープは、特許情報を調べるだけでなく、市場や競合、自社の事業などの情報と組み合わせて分析し、経営や事業の判断につなげる取り組みです。

 

知財部門の役割が、特許の取得や管理だけでなく、事業や経営を支える方向へ広がっていく中で、IPランドスケープへの関心も高まっていきました。

 

コーポレートガバナンス・コード改訂で重要性が高まる

さらに注目が高まるきっかけとなったのが、2021年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂です。

 

この改訂では、上場企業に対し、知的財産への投資について経営戦略や経営課題との整合性を意識して情報を開示することや、知的財産への投資を含む経営資源の配分を取締役会が監督することが求められるようになりました。

 

知財への投資を経営戦略と結びつけて説明するためには、自社がどのような知財を持ち、それが競合や市場の中でどのような位置にあるのかを把握しておく必要があります。

 

そこで、知財情報と経営・事業情報を組み合わせて分析するIPランドスケープが、知財と経営をつなぐ取り組みとして、より重視されるようになりました。

 

こうした流れを受け、2022年には内閣府と経済産業省が「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」を公表し、2023年にはVer.2.0へ改訂しました。企業が知財・無形資産をどのように経営に活かし、その戦略を投資家などに説明していくかについて、具体的な考え方が示されています。

 

また、2024年には特許庁が「経営戦略に資するIPランドスケープ実践ガイドブック」を公開し、IPランドスケープの活用方法や具体的な分析手法を紹介しています。

 

現在は国の成長戦略でも活用が進む

IPランドスケープを活用する動きは、現在も広がっています。

 

2026年6月に決定された政府の「知的財産推進計画2026」では、日本の成長戦略17分野について、IPランドスケープを活用して競争上の「勝ち筋」を特定し、集中的な知財投資を進める方針が示されました。

 

また、2026年7月のコーポレートガバナンス・コード改訂後も、知的財産を含む成長投資への資源配分について、取締役会が経営戦略との整合性を検証していくことが求められています。

 

このように、IPランドスケープは、特許を分析するためだけの手法ではありません。知財を経営や事業の意思決定に活かすための取り組みとして、その重要性が高まっています。

 

IPランドスケープでは何を分析し、どう活用するのか

IPランドスケープでは、特許などの知財情報と市場・競合・事業に関する情報を組み合わせ、経営や事業の判断に役立つ形で分析します。

 

では、具体的にどのような分析が行われ、その結果はどのように活用されるのでしょうか。

 

IPランドスケープで行われる主な分析

IPランドスケープで行われる分析には、たとえば次のようなものがあります。

 

・競合他社がどの技術分野にどれだけ出願しているかを調べ、各社の注力領域を把握する

・特定の技術分野について、どの企業が参入しているか、競争が少ない領域はどこかを可視化する

・自社と他社の保有特許を比較し、自社の強みや弱み、まだ開拓されていない領域を把握する

・自社の技術と組み合わせられる技術を持つ企業を探し、提携先の候補を抽出する

 

このように、単に特許の件数や内容を確認するだけでなく、競合企業の動きや技術分野全体の状況を把握し、自社の立ち位置を明らかにしていくのが特徴です。

 

特許庁の「経営戦略に資するIPランドスケープ実践ガイドブック」でも、目的に応じたさまざまな分析手法が整理されています。

 

分析結果は経営や事業の判断に活用される

IPランドスケープの分析結果は、さまざまな経営・事業上の判断に活用されます。

 

たとえば、次のような場面です。

 

・新規事業を検討する際に、市場の状況や技術面での参入ハードルを把握する

・研究開発のテーマを検討する際に、競争が激しい領域と今後伸びる余地のある領域を見極める

・M&Aや業務提携を検討する際に、候補企業が持つ技術や知財を分析する

・自社事業に関係する他社の特許を把握し、知財上のリスクや対応策を検討する

 

特許などの知財情報は公開情報であり、競合企業の技術開発の方向性や、自社との違いを把握する手がかりになります。

 

こうした情報を経営判断に取り入れることで、経験や勘だけに頼るのではなく、客観的なデータをもとに事業や研究開発の方向性を検討しやすくなります。

 

また、経営層や事業部門、知財部門が同じ分析結果を見ながら議論できるため、部門ごとの認識をそろえやすくなることも、IPランドスケープを活用するメリットのひとつです。

 

参照:特許庁 令和2年度産業財産権制度問題調査研究「経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究について」

 

IPランドスケープで変わる知財人材の役割

IPランドスケープの広がりは、知財の仕事のあり方にも変化をもたらしています。

 

従来、知財部門では、特許の出願や権利化、他社権利の調査など、「権利を取得し、守る」業務が中心でした。

 

これに対してIPランドスケープでは、知財情報を分析するだけでなく、その結果を経営や事業の判断につなげることが求められます。たとえば、「どの技術領域に投資すべきか」「どの企業と提携すべきか」といった経営・事業上の問いに対して、知財の観点から判断材料を提供する役割です。

 

そのため、知財人材には、特許実務の知識やスキルに加えて、自社の事業や市場、競合、経営戦略への理解も求められるようになっています。

 

実際、特許庁の「知財人材スキル標準」では、2017年の改訂でIPランドスケープが知財人材のスキル評価指標に加えられました。企業の知財部員だけでなく、企業を外部から支援する弁理士にとっても、事業や経営への理解が重要になる場面は増えています。

 

知財の実務経験がある方にとっては、これまで培ってきた専門性を、より経営や事業に近い領域で活かす機会が広がっているといえるでしょう。

 

また、これから知財の仕事を目指す方にとっても、特許や法律の知識だけでなく、技術や事業への理解を深めることが、自分の強みにつながります。

 

まとめ|IPランドスケープは知財と経営をつなぐ取り組み

IPランドスケープは、特許などの知財情報と経営・事業情報を組み合わせて分析し、その結果を経営や事業の意思決定に活かす取り組みです。

 

コーポレートガバナンス・コードの改訂や政府の知財政策を背景に、知財を経営戦略に取り込む動きは広がっています。

 

それに伴い、知財の仕事も、「権利を取る・守る」だけでなく、知財を使って事業や経営に貢献する方向へと役割が広がっています。

 

こうした変化を踏まえて、知財分野でのキャリアを考えたい方は、ぜひ「知財弁理士転職.jp」をご活用ください。

 

執筆者

中澤 泉(弁護士)

弁護士事務所にて債務整理、交通事故、離婚、相続といった幅広い分野の案件を担当した後、メーカーの法務部で企業法務の経験を積んでまいりました。その後フリーランスのライターとして活動を経て、現在は合同会社ことりうみにて法律分野を中心にライター・編集者として活動するとともに、弁護士としても企業法務に携わっています。

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